統合失調症②
- 主な症状と定義と解説
1) 幻覚
① 幻聴
自分についての悪口や、批判・命令が人の声となって聞こえる。
話しかけと応答のかたちで聞こえることもある。
自分の考えを声として聞くのを考想化声という。
② 体感幻覚
内臓が溶けて流れ出すなど、奇怪な内容が多い。
その他、幻視・幻嗅なども起こることがある。
2)思考障害
① 思考の形式の障害:連合弛緩
考えや話がまとまらず、話の筋が通らなくなる。
高度になると滅裂思考といい、
話の内容がばらばらで理解できない。
単なる言葉の羅列に陥った状態を「言葉のサラダ」という。
また、独自の文字や言葉を作成する言語新作もみられる。
② 思考の内容の障害:妄想
現実離れした誤った内容でありながら、
訂正不能の確信に満ちた考えをもつ。代表的なものを以下にあげる。
(ア) 被害妄想
・ 関係妄想:「隣に座った人が咳払いをしたのは、私への嫌がらせだ。」
・ 迫害妄想:「ある組織に狙われている」
・ 注察妄想:「道行く人が自分をじろじろ見る」
・ 物理的被害妄想:「電波で操られる」
(イ) 誇大妄想
・ 血統妄想:「高貴な家の出である」
・ 宗教妄想:「自分は救世主」
・ 恋愛妄想:「自分は○○さんと恋愛関係にある」
・ その他、罪業・心気・貧困妄想などもあるが、
これらはうつ病でもみられる。
また、妄想は発生の仕方によっても分類される。
(ウ) 1次妄想
その発生が心理的に了解できないもの。統合失調症に特徴的である。
・ 妄想気分:周囲の雰囲気が奇妙に不気味に変わったと、
漠然と感じる。恐ろしさを伴うことが多い。
・ 妄想着想:根拠がないことを突然思いつく。
「自分は神の子だ」
・ 妄想知覚:見聞きしたことに特別の意味を与える。
「今、すれ違った人が咳払いをしたのは、自分への嫌がらせである」
(エ) 2次妄想
幻覚などを説明するための妄想。
「あれこれ支持する声が聞こえるのは、宇宙人の自分への指令である」
(幻聴を説明するため宇宙人という概念が用いられている)。
3) 自我意識の障害
以下のような自我意識に関する特異な思考がみられる。
(ア) 能動性の障害
・ 離人感(自分が自分でないような感じ)
・ させられ体験(誰かに操られる)
・ 自生思考(勝手に考えが浮かぶ)
・ 思考奪取(考えが抜かれる)
・ 思考吹入(考えが誰かに吹き込まれる)
・ 思考干渉(考えが操られる)
(イ) 外界や他人に対する意識の障害
・ 考想察知(考えが他人に知られてしまう)
・ 考想伝播(考えが皆に伝わる)
統合失調症では、上記のようなさまざまな症状がみられるが、
意識と知的能力は保たれるのが普通である。
ただし、詳細に神経心理学的検査を行うと
、認知機能に軽度な低下が認められる。
大切なのは、陽性症状と陰性症状という概念である。
実際の統合失調症の治療では、
どちらの症状が優勢かをまず大まかに判断し、治療法を選択する。
・ 陽性症状:幻聴や妄想、滅裂思考、緊張病症状、
奇異な行動など、一見して異常とわかる派手な症状
・ 陰性症状:感情平板化や無気力、自発性の低下、
自閉など、精神機能の減退を反映する症状
参考)編集 精神保健福祉士養成セミナー編集委員会
『精神医学』発行所 へるす出版
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜