腸に問題があると、自律神経は乱れる
腸に問題があると、自律神経は乱れる
・腸内環境の乱れが自律神経を脅かす
多様なホルモンは脳内だけでなく、腸内でつくられている。
ドーパミン、セロトニンなどは腸内細菌によってつくられるのだ。
そのため、腸内細菌のバランスが崩れると、やはり自律神経への影響が出てくる。
特にセロトニンはストレスに対抗したり、
自律神経の調整をしたりするが、
脳でつくられるのはわずか5%以下にすぎない。90%以上は腸でつくられているのだ。
脳内でつくられるセロトニンは原則として脳内で調整されており、
ストレスに対抗したり、睡眠のリズムをとるメラトニンの材料になったりしている。
一方で、腸ではストレスを感じるとセロトニンが合成されるのだが、
それによって蠕動運動がとても盛んになる。
すると、食べたい物があまり消化されず、
下痢としてどんどん排出する働きが起きる。
ちょっとした緊張ですぐに下痢をしてしまう
過敏性腸症候群(IBS)の患者さんは、この働きによって症状が出ている。
これはストレスに対抗するためのセロトニンの働きによるもので、
これ以上ストレスを感じたり、
毒素などが入ってきたりしないように、
できるだけ早く腸内のものを出してしまおうという防御運動なのである。
また、ストレスに対抗するホルモンとしてもうひとつ、
コルチゾールというホルモンがある。
ストレスを感じたとき副腎から分泌される。
腸内細菌のいない無菌マウスと、
正常な腸内細菌のマウスに同じストレスをかけた実験を見ると、
腸内環境のいないマウスは正常なマウスの倍以上もコルチゾールが分泌される。
逆に言うと、腸内細菌のいるマウスは、
それだけストレスを吸収する力が強く、体の反応が少なくてすむわけである。
もうひとつ、免疫に関与する免疫グロプリンA(IgA)という物質の
分泌を調べた実験がある。こちらは人間による実験である。
それによると、5分間ゆったりした刺激を与えたときは、
1時間ほどでIgAがつくられ、
また1時間ほどで基準値くらいまで下がった後、またしだいに上がっていく。
一方、5分間怒りの刺激を与えると、
やはり1時間ほど少ない量のIgAがつくられるが、
その後一気に基準値を下回り、なかなか元に戻らない。
じつは、IgAは腸の粘膜を防御するとても重要な役割を担っている。
腸粘膜だけでなく全身の鼓膜でも同様の変化が起こるので、
IgAがたりなくなると、
鼻炎になったり、風邪を引きやすくなったりする。
つまり、怒りのようなマイナスのストレスは腸粘膜の働きを低下させ、
免疫力を下げることになるのである。
著者 西岡 敬三『心もカラダもラクになる 血流の整えかた』
発行 明日香出版社
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜