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事実唯真

「森田療法」の森田正馬博士が精神科医を選んだのは、
自身が青年時代から神経症に悩まされたからだという。
神経症の体験を通して、症状はそのままに勉学に集中したら、
いつの間にか完治していたなど不思議な経験をしたからだという。

また、哲学や仏教書になじみ、東洋思想に
かかわっていたことも影響していたのではといわれている。


当時「神経衰弱」と呼ばれていた神経症状は、
心の病のように受け止められがちであったが、
森田は、「物事を気にしやすいという素質があり、当然におこる気分や
感覚に執着し、病と信じ、いたずらに恐怖、苦悩する
ものであると考えていました。」

また森田は、「病気でないものを病気と信じて、
異常と主張するまったく主観的なものだ」と説く。

神経症は病気ではない、という森田の学説は、
それまでの定説を百八十度覆す考えであり、
発想を根本的に変えることによって、
ものごとの新しい局面を切り開くことになりました。


森田は、「神経質の治療上、もっとも大切なことは、
患者の人生観であり、人生観が正しくなれば、
神経症は完治して再発しない」と言っています。

人生観を正しくとは「ただ人生を(あるがまま)に見、
苦しさを苦しみ、怖れを恐れ、喜びを喜べばよい。
人は自然に帰れば、強迫観念のあるはずはない」と述べています。
これを、「事実唯真」といいます。
事実唯真(じじつただしん/じじつゆいしん)は、
「事実だけが実体のある真実である」ということです。
事実とは体験を通して得られるもので,
頭の中だけで理解したことは事実とはいえません。
現実のできごとを(ありのまま)に見ることです。
思い込みで、事実を歪めてはいけません。


「嫌なものは嫌である。」「心配事は、仕方ないこと。」
というように、事実として素直に感じることです。

参考)著者 岸見勇美 「高良武久 森田療法完成への道ー不安な時代に生きる知恵ー」
               発行所 株式会社 元就出版社
精神保健福祉士 伊藤

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