異常がなくても苦痛を感じることがある。~森田理論
異常がなくても苦痛を感じることがある
神経質症の場合、胃が痛む、胸がどきどきする、
喉が引っかかるなど、体に不具合を感じて病院に行っても、
どこも悪いところはないと言われます。
症状を説明するに足りる体の異常が見つからないのが、
神経質症の特徴だからです。
神経質症と診断されたということは、
精神的にも身体的にも悪くないということです。
普通ならそれで喜んで帰るのですが、
神経質症の人はそうはいきません。
こんなに苦しいのだから、どこかに病気があるはずだと思い、
もっとよく検査してもらおうと病院を転々とします。
胃の具合が悪いといって、何と耳鼻科、
眼科にまで行き、そこで精神科を紹介されてやって来た人もいました。
このようなことは、異常な感じがまったくないのが健康だと
思いこんでいるから起こるのです。
健康とは、まったく不調を感じないことではありません。
優秀な生徒が、試験でいつも満点を取るとは限らないのと同じです。
学校の試験なら、60点とれば合格です。
少しくらいは間違ってもあたりまえ、
少しくらいは調子が悪いところがあってあたりまえということです。
痛みやかゆみ、重たい感じなどが少々あっても、
別に病気でないことが多いものです。
心の領域についても、さびしさや不安を感じる、
いらいらして仕事に集中できない、人と話すと緊張する、
寝苦しい夜があるなどといったことは、誰にでもあります。
正常だといっても、いつも気分がすっきりしているわけではありません。
緊張したり恥ずかしがったり、不安を感じたりしながら生活しています。
異常な感じも不快感も一度も感じたことがないなどというのは、
卒業するまで満点しか取らなかった生徒のようなもので、現実にはありえません。
参考)
著者 森岡 洋『よくわかる森田療法』出版社 白揚社
精神保健福祉士・介護福祉士
森田療法家
伊藤大宜