自覚の大切さ~森田理論~
【心に嘘をつかず、事実をそのまま受け止める】
森田療法の森田博士は神経質者に対して、
(自覚の大切さ)を強調した。
あるがままの自分の心の事実を、いっさいの評価を離れ、
是非善悪の尺度を捨てて見すえることを教えた。
人によく思われたい、思惑が気になる、軽蔑されたくない、
恥ずかしい、寂しい、恐ろしい、心配だ―心中に起伏するいっさいの
感情をそのまま認めることである。
とかく私たちは、これらの感情に対して、是非善悪の選択をし、
非と悪を認めたがらない。
認めれば自分が「悪人」になるからである。
このような態度はどこから生じるのであろうか。
それは、感情や気分は自分の意のままになるものだ、
という認識から生じるのではないだろうか。
意のままになるとすれば、
起伏するいっさいの感情について、私たちは責任を負わなければならない。
負うとなれば、非と悪の感情を認めたくないということになる。
自分は悪人であると断じて生きる姿勢がない限りは、こうならざるをえない。
感情や気分は自然現象であって、
私たちの意のままになるものではない。
私たちの責任の及ぶところではない。
それを、是非善悪の尺度で測ろうとしたり、
責任を負うべきものであるかのように考えるのは、思い上りもいいところだ。
このことに、深く思いをひそめてみよう。
そうすれば、どんな感情や気分も心の事実として、
そのまま見すえることができるはずである。
あるがままの感情を受け入れる
それが自然体である。
参考)著者 長谷川洋三『森田式精神健康法』発行所 三笠書房
精神保健福祉士・介護福祉士
森田療法家
伊藤 大宜