神経質症「症状を軽視する」~森田理論
症状を軽視する
神経質症の症状は、正常な人なら誰でもあることばかりです。
だから、なくす必要もないし、なくそうとしてもなくなりません。
放っておいても何の害もないものです。
それを完全になくそうとするのは、
時間とエネルギーの無駄以外の何ものでもありません。
「苦心惨憺水の泡」という結果になります。
「苦心惨憺水の泡」の意味
「長い間苦労して作り上げたものが、まるで水の泡のように消えてしまい、何の意味もなかった」という意味。
つまり、多くの努力を費やしたにもかかわらず、その成果が得られず、全てが無駄になったという状況を表しています。
悩んでいるときには、
「この症状があるから何もできない」と考えがちですが、
本当は、「症状はあっても何でもできる」のです。
神経質症の症状を生活に支障を生じる有害なものだと思えば、
それが起こってきたときには不安や恐怖が生まれます。
完全になくそうと無駄な努力をするようにもなります。
病院を転々としてお金を使ったり、
不必要に抗不安薬を飲み続けることにもなります。
しかし、それを正常な人なら誰にでもあることで、
とりたてて問題にすることではないものと見きわめれば、
症状があっても心に何の動揺も起きません。
不眠のために大量の睡眠薬や強力精神安定剤を服用していた人が、
神経質性不眠症を克服しました。
克服したといっても、毎晩ぐっすり眠れるようになったわけではありません。
寝苦しい晩もかならずあります。
けれどもその人は、
「こういうときもあるものだ。眠れないからといって、どうということはない」と、
まったく驚かなくなりました。
これが治ったということです。
軽視するということは、
そんな症状はとるにとらないという行動をすることです。
症状を感じても、今現在やっていることをそのまま続けることです。
薬を飲んだり病院に行ったりという、
症状を軽くしたり治そうとしたりする行動は、いっさいしないということです。
参考)
著者 森岡 洋『よくわかる森田療法』出版社 白揚社
精神保健福祉士・介護福祉士
森田療法家
伊藤 大宜