統合失調症とは
統合失調症とは
- 主要な症状の理解
統合失調症は、主要な精神疾患の1つで、
日本の精神科入院患者26.6万人のうち16.6万人(62.4%)、
外来患者25.8万人のうち7.0万人(27.0%)を占める(2014年患者調査)。
未受診を含めた一般人口の有症率は0.7%で、
10歳代後半~30歳代に発症することの多い、頻度の高い疾患である。
統合失調症には多彩な症状を認める。
① 自分を悪く評価し言動に命令する幻声、
何者かから注目を浴び迫害を受けるという被害妄想(幻覚妄想)。
② 自生思考(勝手に考えが浮かぶ)や作為体験(させられ体験)など、
思考や行動における能道感と自他境界感の喪失(自我障害)。
③ まとまりのない会話や行動など、
目標に向けて思考や行動を統合することの障害(不統合)。
④ 感情や意欲の低下を背景とした、
思考や行動における自発性の低下〔精神運動貧困、陰性症状(狭義)〕。
⑤ 以上の症状についての自己認識と自己対処の困難(病識障害)。
⑥ それらに基づく対人関係、身辺処理、職業・学業における機能低下。
このうち、①と②を総称して陽性症状、③と④を総称して陰性症状(広義)とよぶ。
- 病因と病態
統合失調症で認められる幻覚妄想は
「他人が自分に注目し危害を加えようとする」という内容で、
他人が自分に対してもつ意図がテーマである。
自我障害における能動感や自他境界感の喪失と併せて、
脳機能における対人関係システム(社会脳)や
自我機能システム(自我脳)の機能失調が背景にある。
幻覚妄想、自我障害、不統合という症状はそれぞれ、
対人関係、自我機能、表象機能という人間で特に発達した脳機能の
障害を反映している。
脳機能の発達に伴い対人関係と表象操作が複雑となる思春期から青年期に、
それまで統合失調症への脆弱性を代償してきた脳機能が、
その脆弱性を代償しきれなくなり機能を失調することで発症に至る。
補足)代償機能とは、脳には、
脆弱性によって生じた機能の低下を補おうとする「代償機能」が備わっている。
この代償機能によって、脆弱性があっても、
日常生活に支障をきたさないレベルで脳機能を維持することができる。
つまり、脆弱性を抱えながらも、
発症せずに生活できる状態を保つことが出来るという事である。
代償機能の破綻とは、
過度のストレスや環境の変化など、さまざまな要因によって、
代償機能が限界を超えてしまうことがある。
代償機能が破綻すると、脳の機能が著しく低下し、
統合失調症の症状が現れると考えられる。
例えば、思春期や青年期は脳の発達が大きく変化する時期であり、
統合失調症の発症リスクが高まる時期でもあります。
この時期に、学業や人間関係などのストレスが加わることで、
代償機能が破綻しやすくなると考えられている。
こうした症状の背景には、前頭葉や側頭葉の脳機能の軽微な失調がある。
特に幻覚妄想は。神経伝達物質の1つであるドパミン系の機能の過剰と関連している。
統合失調症の病因における遺伝と環境の役割の比重は、
高血圧や糖尿病の場合と同じくらいである。
参考)編集 下山晴彦 中嶋義文 『精神医療・臨床心理の知識と技法』
発行所 医学書院
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜