「行動の原則」~森田療法~
「行動の原則」で、自分の行動を総点検
森田療法では、常に「理屈よりも実行」と、日常実践を重視する。
感情や気分はどうだろう?そのまま受け入れて、とにかく、
やるべきことをやる。この行動こそが、神経症からの解放を保証し、
さらに人間的な成長、前進を保証するのである。
1.困難に直面し、迷ったときのチェックポイント
困難に直面して不安を感じているとき、神経質症状にとらわれやすい。
苦しいけれど、踏みとどまって次の5点をチェックする。
① 問題は何か。
困難を感じさせている客観的事実をつかむ。
火のないところに煙は立たない。不安は煙のようにとらえどころがないが、
事態をよく観察して、事実の中に問題を発見する。
② 原因はどこにあるのか。
問題はどうして起こったか、その因果関係と、
ほかの問題とどのように絡み合っているのかを検討する。
原因はもっぱら自分の心身の状態にあるとするのは、神経症的態度である。
③ どんな解決方法がありうるか。
あらゆる可能な解決方法を、思いつくままに書き出してみる。
その際、変革を恐れない。
④ 自分にできる最もよい解決方法は何か。
書き出した多くの解決方法の中から、一つだけ選び出す。
⑤ 選び出したら、ただちに実行に移す。
2.初めての行動に不安はつきもの
不安は安心のための用心である。
経験したことのないこと、あるいは経験の未熟なことをしようというとき、
不安になるのは当然。用心しながら行動する。
不安をなくしてから行動しようとしていては、いつまでも行動できない。
3.無理にでも行動すれば“はずみ”がつく
坂の上の大きな石も、動かなければ何の力も発揮しないが、
動いて転がり出すと、勢いがついて、途中に障害があれば打ち砕き、
あるいは飛び越えるなど、たいへんな力を発揮する。
4.今できることは、たった一つしかない
したいこと、しなければいけないことが山ほどあっても、
今できることは一つ。選択が大切である。
忙しいときほど優先順位をつけて、一つ一つ片づける。
5.「100%」はあり得ない
「完全」は観念の産物であって、現実には存在しない。
したがって、完全、不完全を問題にすることは現実的ではない。
私たちにできることは、自分なりに精一杯やることだけである。
6.休息とは仕事の中止ではなく、仕事の転換である
読書に疲れたら、庭掃除、部屋の整頓などが休息になる。
緊張を要する仕事に疲れたら、資料の整理のような仕事も休息になる。
この要領を体得すると、いろいろな仕事ができて、しかも疲れを知らない。
7.愚痴は行動を鈍らせ、仲間を悩ませる
愚痴はひとときの気休めにはなっても、
惨めさを募らせるだけ。そればかりか、
愚痴を聞かされる相手から敬遠され、やがて無視される存在となる。
8.理想は高く、実行目標は小刻みに設定
現実に埋没してしまわないために、理想は高く、
理想に走って失敗しないために、実行目標は手近で達成可能なものでなければならない。
高望みして失敗を繰り返さないこと。
小さな成功でもその反復は、勇気と自信を養い、建設的で明るい性格を養う。
9.生産的・建設的・奉仕的な行動は、自他共に生かす
自己中心の行動は必ず生きづまる。
人々の役に立つ、世の中が必要としている度合いの大きい行動であればあるほど、生きがいを感じる。
10.行動は常に創造的である
人間は一人ひとり独自絶対の存在である。
いかに共鳴し合った二人でも、お互いに相手の人生を肩代わりして生きることはできない。
模倣といえども、相手の行動そのものたりえない。
反復といえども、まったく同じ行動はありえない。
どんな行動も、独自絶対の存在である「私」の創造である。
参考)著者 長谷川 洋三『森田式精神健康法』 発行所 三笠書房
精神保健福祉士・介護福祉士
森田療法家
伊藤 大宜