ストレス反応
生体システムとしてのストレス反応
ストレスとは恒常性を乱す緊張
人の身体はさまざまな環境からの脅威にさらされるが、
通常は免疫系や自律神経系などによって調整され、
生体システムは一定のバランスを保っている。
これを恒常性(ホメオスタシス)とよび、
これに乱れをもたらす一般的な緊張をストレスと名づけた。
ストレッサーとストレス反応
環境からの脅威がその人の耐容能力をこえた場合は、
生体の生理的システムが破壊され、全身的な生理的変化がおこる。
これをストレス反応とよんだ。
ストレス反応は、生体の防衛メカニズムであると
同時に適応メカニズムでもある。
ストレスとはこのメカニズムがはたらいている状態であり、
その要因をストレッサーという。
ストレッサーには、細菌感染や有害ホルモンによる生物学的侵襲、
高温や寒冷刺激などによる物理的侵襲、
あるいは化学薬品などによる科学的侵襲などさまざまなものがある。
この反応を「一般適応症候群」と名づけた。
ストレスとは
原因や自覚のあるなしは無関係の1つの生物学的なプロセス、
体内の広範な作用の総体であり、
ある有機体がその存在や健康への脅威を知覚したときに
おこる体内の変化とした。
ストレス反応は、生存がおびやかされる危険に
囲まれていた原始時代には生きのびるために必要な反応であったが、
現代社会においてはそうした脅威を感じとる直観力が失われ、
身体はストレス反応をおこしているのに、
心は気づかないままでいるために
どんどん身体心がむしばまれていくのだという。
ストレスへの対処(コーピング)
ストレスコーピング 問題と気持ちのどちらかに対処するか
コーピングとはストレスとなる問題が
ふだんのやり方では乗りこえられないときに
考え出される新しい行動や認知であり、
創造的な対応である。
コーピングには次の2つの戦略がある。
① 問題志向のコーピング
問題に対して積極的に向かっていく方法である。
② 情動志向のコーピング
健康や人間関係の問題など、
積極的な解決方法がすぐには見いだせないときに、
精神的な負荷を軽減しようとする戦略である。
音楽を聴きリラックスする、あるいは旅行や買い物に
行って気分転換をはかったりすることもその1つである。
危機を回避する3つの要因
ストレスの多い問題に遭遇したとき、
問題を解決に導くためには以下の3つの要因が
必要であり、どの1つが欠けても危機が生じるという。
(認知は感情や評価によってゆがむ)
① できごとの現実的な認知
できごとに対する認知の仕方は、
それによって引きおこされる感情によってゆがむ、
周囲の人々からは、ささいな失敗といわれても
本人は取り返しのつかない大失敗だと
課題評価していることもある。
できごとの認知は、できごとが及ぼす自分自身や
生活への影響をどのように意味づけるかという
評価と関連し、対処行動を選択するうえで重要な要因となる。
(人々の支えと社会資源)
② 適切なソーシャルサポート
一緒に考えたり、支えになってくれる人の存在や
適切な社会資源の情報はできごとによって
傷ついた自尊心を高め、みずから問題解決に向かう力となる。
(防衛機制を適度に用いる)
③ 適切な対処機制
できごとが簡単に解決できない場合は不安や緊張が
高まり、回避・攻撃・抑圧といった防衛機制がはたらく。
防衛機制を適度に用いることによって不安や緊張に対処し、
問題解決に向けて行動することができる。
ライフイベントストレス尺度
*最高得点の平均値を100とした場合
生活事象
- 配偶者の死亡 100
- 離婚 73
- 別居 65
- 留置所拘留 63
- 家族メンバーの死亡 63
- 自分の病気あるいは障害 53
- 結婚 50
- 解雇される 47
- 夫婦の和解 45
- 退職 45
参考)『精神看護の基礎』発行所 医学書院
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜