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精神療法とは

精神療法

A 精神療法の定義

 精神療法は、
「精神医学的治療の一つで、言語的、非言語的な
対人交流を通して精神的な問題を解決し、
悩みを軽減することを目的とした精神医学的および
心理的治療法」と定義できる。
なお、精神療法は心理療法と同義であり、
サイコセラピー(psychotherapy)の日本語訳として
精神科医は精神療法という用語を、
心理領域では心理療法という用語を用いるのが
慣用になっている。

 

B 精神療法の適応

 精神療法が重要な役割を果たす場合は、
不安障害や身体表現性障害などの神経症性障害、
うつ病性障害、パーソナリティ障害、
精神病性障害の寛解期などの精神医学的障害、
そして一般身体疾患による心理的反応である。
一方、精神療法だけでは効果があまり期待できない場合は、
活発な精神病状態、重篤なうつ状態、
双極性障害の躁状態、脳の器質的障害、
著しい反社会的性格などである。

 

C 精神療法の形態

 精神療法には、
個人を対象にした個人精神療法のほか、
夫婦を対象にした夫婦療法、
家族を対象にした家族療法、
集団で行われる集団療法などがある。

 

D 各種の精神療法

 

①   認知療法・認知行動療法

認知療法・認知行動療法とは、
人間の情緒が認知のあり方によって大きく影響を
受けることから、極端な認知を修正することによって
問題に対処し情緒状態を変化させることを目的とした
短期の精神療法である。
これは、うつ病性障害をはじめとして、
パニック障害などの不安障害、心的外傷後ストレス障害、
身体表現性障害、適応障害など、
さまざまな精神科疾患に対して効果的であることが実証され、
もっとも標準的な精神療法の一つになっている。

 

自動思考とは、
ある状況で自然にそして自動的に湧き起こってくる思考および
イメージで、その時々の認知のあり方が反映される。
スキーマは、
心の底に気づかれないままより深層に存在している
個人的な確信である。
こうした自動思考やスキーマは私たちの瞬間的な判断を助ける
適応的な働きをしているが、
何らかの要因でそのバランスが崩れるとそれに
関連した非適応的なスキーマが賦活化され、
その影響で極端な認知の歪みが生じてきて、
それが自動思考として意識され、同時に行動、
感情、動機の障害が現われてくる。

 

その認知の歪みの主なものを次にあげる。

イ)    恣意的推論:証拠が少ないのにあることを信じ込み、
独断的に思いつきで物事を推測し判断する。

ロ)    2分割思考:常に白黒をはっきりさせておかないと気がすまない。

ハ)    選択的抽出:自分が関心のある事柄にのみ目を向けて抽象的に結論づける。

ニ)    拡大視・縮小視:自分の関心のあることは大きくとらえ、
反対に自分の考えや予測に合わない部分はことさらに小さくみる。

ホ)    極端な一般化:ごくわずかな事実を取り上げて決めつける。

ヘ)    自己関連づけ:悪い出来事をすべて自分の責任にする。

ト)    情緒的な理由づけ:そのときの自分の感情状態から現実を判断する。

 

 こうした、思考―感情―行動―思考の悪循環を断ち切るためには
認知過程の修正が必要になるが、
その際には、認知再構成法と呼ばれる方法を用いて精神的に
動揺した場面、そのときの感情とそれに関係した思考や
イメージを書き出して現実場面と比較・検証したり、
非適応的な思考パターンを修正するために患者が日常生活で
検証することができるホームワークを課したりする。
また、うつ的な回避行動を楽しめたり、
やりがいを感じられたりする健康行動に置き換えていく
行動活性化や、問題の対処法を考える問題解決技法などの
行動的技法を用いたりする。

 

②   森田療法

1920年ごろに「森田正馬」が創始した治療技法で、
森田神経質などの神経症性障害の患者に用いられる。
森田療法では、こうした患者は先天的に神経質
な性格傾向(ヒポコンドリー性基調)を有し、
何らかの誘因で身体や精神の変化に敏感になり、
注意が集中し、さらに感覚が鋭敏になって精神交互作用と
呼ばれる感覚と注意の交互作用状態が生じていると考える。
そして、「かくあるべし」と考える理想の自己像と
「かくある」認めにくい現実の自己像との間の
葛藤(理想の矛盾)の結果として、症状へのとらわれが
起きているとする。

 治療としては、まず症状(気分)をあるがままに受け入れて、
やるべきことを目的本意、行動本意に実行させ、
それによってあっては困るという「死の恐怖」を
よくありたいと思う「生の欲望」に転換させるようにする。



精神保健福祉士・介護福祉士

伊藤 大宜

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