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認知

認知

 

 人は、心理的なことで嫌な気持ちになったり、
困った行動をすることがある。
多くの人は嫌な出来事があったから、このような嫌な、
困ったことになってしまうと考える。

 またストレスという言葉は、ほとんどの人が知っていて、
ストレスがあったから嫌な気分になって身体にも症状が出たのだ、
などと考える。

 この考えでいくと、嫌な気持ちにならないためには、
ストレスを避け続けて生きることが必要である。
しかし、すべてのストレスや嫌な出来事を避けることは不可能である。

 多くのひとは「嫌な出来事」があったから「嫌な気持ち」になったと
考えている。
ここで「嫌な出来事」と「嫌な気持ち」とのあいだに
「認知(思考・とらえ方)」を挿入するのが、認知療法のポイントである。

 「認知」を挿入することにどんな意味があるのだろうか。

「嫌な出来事」は起きてしまった事実なので変えることはできない。
しかし「認知」は、人の頭のなかの(とらえ方)や(考え方)なので、
少し練習すると変えることができる。
「認知」が変われば「嫌な気持ち」にならなくてすむのである。

 このように、認知によって大きく影響を受けるのは
気持ち(感情・気分)であることを理解すことが大切である。

例―

知り合いにあいさつ>

出来事
:知り合いに、ばったり出会ったので、あいさつしたが、
返事が返ってこなかった。

気持ち
:落ち込む。自分を責める。相手を責める。など

互いに存在する認知
:相手は私のことを嫌っている。
怒っている。私は相手になにかしたのだろうか。
人に嫌われた。
知っている人に会ったら必ずあいさつするべきなのに・・・。など

 

このように、起きた出来事に対してどのような
認知をもつかによって、さまざまな感情が生じる。

普段、自分がどのような認知をもっているかをいちいち意識していない。
そのため、客観的な事実であり、
動かすことのできない「出来事」と、
その出来事に対してどのように考えたかという「認知」とを
区別することがない。渾然一体となっていることが多い。

 例えば「嫌な出来事」という言い方もよく考えると「出来事」は
客観的な事実であるが「嫌な」という部分は、
その人が出来事に対して考えたことなので「認知」である。
同じ「出来事」であっても、受け取る人によって「嫌な」となる場合もあるし
「よい」となることもある。
最初から嫌な出来事とよい出来事があるのではない。
出来事が嫌なものかよいものかを決めているのは、受け取る(ひと)なのである。

「出来事」と「認知」との区別をはっきりとつけられるように
なることが、非常に大切である。


自動思考と認知の歪み

 

1.自動思考とは

出来事が起きたときに、ほぼ自動的に頭のなかを流れる考えのこと。

内面化された言葉、自己への語りかけなどがある。

 

自動思考は、いつでも常に頭のなかに生まれているので、
取り立てて意識したり、語ったりされることは少ない。
この自動思考を特定して取り出し、
それが客観的な事実ではなく自動思考であることを十分に意識することは重要である。

 

自動思考は誰もがもっている。
日常出会うさまざまな出来事や刺激に対して、
自動思考も無数に生まれているが、
人によってどのような自動思考をもちやすいかという癖や傾向がある。

抑うつや不安が強い人は、
特徴的な、歪んだ自動思考をたくさんもつことが知られている。
例えば、うつにつながりやすい自動思考には、希望がない、自分は価値がない、
失敗であるという内容のものが多い。
不安につながりやすい自動思考には、危険である。
被害を受ける、自分にはどうにもできない、
対処不可能であるといった内容のものが多い。



2.認知の歪みとは

 

嫌な気分につながりやすい、自動思考のパターン。

① 全か無か思考(二分法思考、白黒思考)

自己、他者、状況、世界などを、よいか悪いか、
できたかできなかったかなどの2種類のどちらかに区分してしまう。
実際には、白でも黒でもないグレーの状況や、
その中間の段階が数多く存在するのに、完全にOKでないものは、
すべてダメであると考えてしまう。

 

② 自動思考(自己関連づけ)

何か悪いことやうまくいかないことが起きたときに、
その責任は自分にある、自分が悪かったと考えてしまうこと。
実際には自分ではなく相手に責任があったり、
誰のせいでもない偶然による事故であったりする場合にも
自分に関連づけて考え、自分が悪いと思ってしまう。

 

③ べき思考

非常によくみられる自動思考であり、
自分や他人や世界が「こうあるべきだ」というルールのような
頑固な信念から出てくる。
基準や理想が非常に高くなっており、
現実がそのようにならなかった場合には落ち込んだり怒りを感じたりする。

 

④ 選択的抽象化

物事の全体を見ることができず、
細かいごく一部に注意が集中してしまい、
こだわり続ける思考である。
多くの人からほめられているのに、
たったひとりに少し否定的なことを言われると、
ほめられたことは忘れてしまい、
否定的な発言で頭がいっぱいになってしまうといったことである。

 

⑤ 過大評価と過小評価

それほど変わらない状況であるにもかかわらず、
根拠なくある一部を高く評価したり、
低く評価したりする思考である。
特に証拠もないのに、自分はダメだ、周囲はよいと評価したり、
また逆に自分は努力しているのに、
周囲は怠けているといったパターンもあり得る。

 

⑥ ラベリング

人間や物事は、多様で複雑なたくさんの側面をもっている。
しかし、ひとつのレッテルを貼ることで済ませてしまうのが、
このラベリングという思考である。
多様な側面を大胆に単純化し「仕事ができない自分」
「悪いことばかり起きる世界」といったラベルを貼ってしまう。



精神保健福祉士・介護福祉士

伊藤大宜

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