心に関係なく手を出せば直ちに全治~森田療法
心に関係なく手を出せば直ちに全治
全治というのは全く過去の歴史に関係がないので、
昨日神経質にひっかかった方も今日の全治がありうる。
その全治は苦しんだ期間が長いほど立派で磨かれているということはなくて、
ご自分のその時の心に関係なく必要なことをしたらもう全治なのであるから、
簡単に言えば、
その場その場でさっさとやっていけばもうそれが生活であり、
全治であり、また修養でもある。全治というものに比較はない。
どこで治られても治られたらそれは本治りであるかぎり問題はない。
自分のしたいこと、好きなことができないという厳しい環境で、
その場の大事な必要さに従って、ご商売、主婦の方のお仕事(家事全般)も、
学生さんの勉強もそれぞれになされば、
その場その場で全治が成り立つ。
実際の生活の場面、場面でもっと良い方法を工夫し、もっと深い追及を、
今までにも増やして努力していくということで十分足りる。
換言すれば劣等感を消すというような、
他の人に劣等感を持つというような治し方ではない。
もっといろんなものに感心していくことに尽きる。
つまり、森田療法で大切なことは自分の心の中に考えを組み立てる言葉と
論理というものを持ち込まないようにすることで、
それが全く外界の論理と異なる心の扱い方である。
それからここに「春風」という掛け軸がある。
何か意味ありげにみえるが、これ自体には何も問題はない。
これはただの春風で、春風駘蕩というが、すべての人に同じように吹いて来る。
選り好みがないという言い方が一番当たるだろうと思われる。
ご自分の心に春風と同じように何の意味づけもなく、
ただ吹いているということだけ。
そうすると神経質にひっかかるというのは心に葛藤が生じた時、
自分にとってどんな意味があるとか、困った、つらい、
苦しいなどという心の小波を自分で取り除こうと計らうことである。
だから、自分の心については皆さんが責任をもって処理する必要はなく、
そのまま目前に迫られた必要な事柄に取り組むことが大切なのである。
著者 宇佐晋一 木下勇作
『続 あるがままの世界』
発行所 東方出版