睡眠障害
睡眠障害
睡眠に関連した多種多様な病気を総称して「睡眠障害」といい、
大きく分類すると、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症があります。
なかでも不眠症は、
一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を有しており、
成人の約10%に慢性不眠症がみられるとされるなど、いまや国民病といえそうです。
「不眠症」とは、夜間の不眠+日中のQOLの低下
悩みや心配ごとがあるとき、試験や旅行の前日、
だれしも「眠ろうとしてもどうしても眠れない」という不眠体験はあるものです。
通常は数日から数週のうちにまた眠れるようになりますが、
ときには不眠が改善せず長時間にわたって続く場合があります。
不眠が続くと、倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭痛、
めまい、食欲不振など、日中にさまざまな不調が出現するようになります。
このように「夜間の不眠が続き」
「日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、
この2つが認められたとき不眠症と診断されます。
神経機構や体内時計が関与
不眠症のタイプとメカニズム
不眠症には、寝つきの悪い「入眠障害」、
眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、
早朝に目が覚めて二度寝ができない「早朝覚醒」などタイプがあります。
不眠症状タイプは、原因を探ったり、睡眠薬を選択したりする際に参考になります。
日中の不調が決め手
睡眠時間は問題ではない
「社会生活基本調査」では、日本人の睡眠時間は平均して7時間半程度ですが、
その人にとって十分な睡眠時間(必要睡眠時間)には大きな開きがあります。
ごくまれに、3、4時間ほどの睡眠で間に合っている人(ショートスリーパー)
もいれば、10時間ほど眠らないと寝足りない人(ロングスリーパー)までさまざまです。
また、健康な人でも年齢とともに必要睡眠時間は徐々に短くなります。
加齢とともに不眠症状は増加し、60歳以上では半数以上に認められますが、
「若いころはもっと眠れたのに」は禁物です。
なぜなら、不眠症は不眠そのものだけではなく「日中に不調が出現する」
ことが問題なのです。眠りが浅く感じられても、
昼間の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。
睡眠時間が短いことや目覚めの回数にこだわりすぎないことが大切です。
不眠症の原因のさまざま
睡眠恐怖症に陥る前に対策を
不眠はだれでも経験しますが、
自然に改善して再び眠れるようになることがほとんどです。
ただし、いったん慢性不眠症に陥ると適切な治療を受けないと
回復しにくいといわれています。
不眠の原因はストレス、心や身体の病気、薬の副作用などさまざまで、
原因に応じた対処が必要です。
さらに、不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、
なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。
生活習慣の見直しなど家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。
睡眠の推奨事項
個人差を踏まえつつ、日常的に質・量ともに十分な睡眠を確保し、心身の健康を保持する
高齢者―
・長い床上時間が健康リスクとなるため、
床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する。
・食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
・長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中は長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす。
成人―
・適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。
・食生活や運動等の生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
・睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、
生活習慣の改善を図ることが重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する。
こどもー
・小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保する。
・朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、
夜ふかしの習慣化を避ける。
参考)
一般社団法人 日本衛星検査所協会『ラポ 2月号』
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜