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依存症~依存症問題維持連鎖

依存症

 

(なぜ家族は、依存症の回復に取り組まなければいけないのでしょうか?)

 

 「依存症問題解決の鍵は家族が握る」
「依存症問題解決は家族支援から始まる」と、
依存症では家族の協力が強調されています。


 どのような病気でも、家族の1人が病気になると、
その回復のために家族が協力するのは自然なことです。
しかし、依存症は、あえてそれを言葉にして強調する
必要があるほど、家族が協力するのがむずかしい病気なのです。

 

家族が依存症の回復に取り組むことで得るもの

 

 依存症からの回復を必要とする本人の取り組みに、
協力というかたちで家族に負担を求められることに
納得ができない思いが家族にはあると察します。

 

依存症から本人が回復する

 長年の家族の混乱の原因は、
依存症による本人の認知や感情、行動の障害でした。
依存症は家族を巻きこみます。
本人が依存症から回復しないかぎりは、
これまでと同様の不幸が続きます。

 

家族が受けた影響から立ち直る

 依存症問題をかかえた長年の生活で家族は
マイナスの影響を受けました。
否定的感情や被害感を強め、自己否定に陥っていました。
また、認知にも偏りが生じ、感情のコントロールもむずかしく、
自信を失い、孤独を感じていました。
この状態から抜け出すには、依存症の回復に取り組むプロセスで、
家族自身が自分を問い直し自分を取り戻す作業を、
同じ立場の家族のなかで進めるのが役に立ちます。

 

依存症問題維持連鎖

 依存症問題をかかえた家族は、
長年、悩み、苦しんでいるのに、
問題が解決しないのはなぜかという研究が1970年代後半に、
欧米で行われました。その結果、依存症問題が解決しないのは
家族の努力が足りないからではなく、
問題可決の方法について家族が常識的に判断していることと
それに基づく常識的な対応が問題を持続する連鎖になっていることが
判明しました。
依存症問題の解決に対する判断と対応を逆転しないかぎり、
問題の解決はないということです。

 
 これまで家族は、万策尽き果て、
家族の力でコントロールしてやめさせるしか方法がないと
判断していました。そして、依存をやめさせるために監視し、
世話を焼き、干渉し、コントロールしてきました。
依存症の人が問題を起こすと、家族は代わって後始末し、
解決し、責任を取りました。その後、家族は本人を説教し、
批判し、避難し、攻撃しました。

 このような家族の対応に本人は強く反発し、
心を閉ざし、ますます依存して問題を起こしました。
これを依存症問題維持連鎖といい、この悪循環を解消し、
新たな判断とそれに基づく対応が問題解決には必要とされるのです。

 

依存症問題維持連鎖を解消する新たな判断と対応

 

問題解決への新たな判断

 家族は依存症維持連鎖を学習して、
依存症は誰かがコントロールして依存をやまえさせることが
できる病気ではないことをしりました。
家族にも主治医にも自助グループの仲間にも、
依存をやめさせる力はないとことを認めざるを得ません。
では、依存をやめるには誰のどのような力が働く
必要があるのでしょうか。

 依存症の人は、
「死むほど依存を続けたい」と思う一方で、
「死ぬほど依存をやめたい」「やめて、立ち直りたい」
と願う健康な心、自然治癒力、復元力(リジリアンス)
をもっています。そして、その力が強められ発揮されるように
対応することが必要です。

 

家族の新しい対応

 回復の力をもつ主人公として、
本人を信頼し、自分の言動に責任を取る人として尊重し、
家族は次のような対応によって、対等で温かい
家族関係を作ることです。

① 健康な距離をとって、問題に巻きこまれない、振り回されない。

② 本人に対して干渉しない、世話を焼かない、コントロールしない。

③ 病気であると本人を理解し、不安、怒り、恨み、
被害者意識から抜け出す努力をする。

④ 依存症問題の後始末をしない、解決しないことで、
依存症の人が問題に直面する機会にする。

⑤ 依存症の人を責めない、批判しない、避難しない、攻撃しない。

⑥ 素直に正直に家族自身を表現し、
依存症の人を受け入れ、誠実な人間関係を作る。

⑦ 家族は自分自身に関心を向け、
娯楽や休養を生活に取り入れ自分自身を取り戻す。

 

 依存症の人は、依存症という病気になったことには
責任はありませんが、その結果、家族をはじめ周囲の人たちに
迷惑をかけたことに責任があり、関係修復に努力し、
回復に責任をもって取り組むことが期待されます。


参考)
著者 西川 京子 『依存症 家族を支えるQ&A』 発行 株式会社 解放出版社


精神保健福祉士・介護福祉士

伊藤 大宜

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