統合失調症①
統合失調症、統合失調型障害および妄想性障害
統合失調症は主として青年期から成人期に発病し、
発病危険率が0.8%前後と精神障害のなかでも頻度の高い疾患である。
代表的な症状は幻覚・妄想・自我障害を中心とする陽性症状と
感情平板化(感情鈍麻)、意欲の減退、自閉などを中心とする陰性症状からなる。
病因はまだ解明されておらず、病態も多様であると考えられている。
経過も多様であり、急性、慢性に加えて進行性に経過するもの、
波状に経過するもの、欠如状態を呈するものなどさまざまであり、
一部は人格水準低下に至る。多くは比較的若年で発症すること、
慢性の経過をとりやすいこと、
したがって社会生活を行ううえで障害があることなどから、
狭い意味での治療だけでなく社会生活をサポートする
システムやリハビリテーションのシステムが重要である。
頻度と発病年齢
発病危険率は国によって若干の違いはあるが、
一般集団の約0.8%前後とする報告が多い。
発症年齢は大部分が15~35歳であり、
40歳以上や児童期の発病は少ない。
病期と症状
発症の様式は症例によって多様であるが、
おおよそ①前駆期、②急性期、③慢性期に分けることができる。
- 前駆期
統合失調症に特徴的な精神病症状がそろう前に、
非特異的な精神症状を呈する時期があり、
これを前駆期と呼ぶ。
その症状にはさまざまなものがあるが、
比較的多くみられる症状としては、
不安・抑うつ、集中困難、自信欠如、能率低下、睡眠障害などがある。
学生の場合には、急に成績が落ちたり、
不登校になりひきこもることもしばしばみられる。
前駆期の期間は個人差が大きいが、平均4.8年という結果がある。
- 急性期
急性期症状の出現の仕方も一様ではない。
急激に幻覚・妄想が出現し、興奮、昏迷状態を示すものから、
ひきこもり、意欲低下、感情平板化が前景をなすなど
同じ病気と思えないほど多様であるが、
ここでは典型例を想定して、代表的な症状を解説する。
初期には何か起こりそうな、
世界が変わったような、不気味な感じがする(妄想気分)。
そのうち周囲に起こることに特別な意味があり、
自分と関係があるように思えてくる(妄想知覚、関係妄想)。
また、周りと関係なく、例えば「自分には超能力が備わった」と
自分の中で確信する(妄想着想)場合もある。
このような妄想とともに幻覚が生じることもしばしばである。
統合失調症の幻覚でもっとも多いのは玄声であり、
患者を非難するもの、複数の人たちが話し合うかたちのものが特徴的である。
このような幻覚・妄想症状に加えて、
いわゆる自我障害と呼ばれる症状も出現する。
自我障害には思考水入、思考奪取、思考干渉、思考伝播などが含まれる。
以上のような幻覚妄想状態には興奮を伴ったり、
昏迷に陥ったりすることがあり、これを緊張病性興奮、緊張病性昏迷と呼ぶ。
統合失調症のすべてではないが、
とくに急性期には幻覚・妄想に完全に巻き込まれ、
距離を置いてみることができないため、
体験が病気によるものと受け取ることができない。これを病識の欠如と呼ぶ。
- 慢性期
急性期が治療によって改善した後に、
ケースによっては完全寛解に至って、ほぼ病前に戻るが、
多くは残遺症状が残り慢性の経過をとる。
慢性期にみられる症状の中心は陰性症状と呼ばれるもので、
感情反応が起こらない(感情平板化)、
自発性が欠如する(意欲減退)、考えがまとまらない(連合弛緩)、
自分の殻にこもってしまう(自閉)などが主な症状である。
以上のような陰性症状からなる状態を欠如状態と呼び、
これがさらに極端になったものをかつて荒廃状態と呼んだが、
治療が進歩した今日では荒廃状態をみることは少ない。
このように、統合失調症は珍しい病ではない事、
人口の100人に1人(約0.8%)が罹患すること、
大事なのが、早期発見、早期治療に結びつけることである。
服薬管理と心理教育で社会生活も過ごせるので安心である。
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜