高齢者への薬物投与の問題
高齢者への薬物投与の問題
高齢者への薬物投与は、
単に年齢を重ねることで生じる
生理機能の変化により、
若年層とは異なる注意が必要な領域です。
高齢者における薬物投与の特徴
- 多剤併用(ポリファーマシー):複数の疾患を併せ持つことが多く、結果として複数の薬剤を服用するケースが一般的です。
- 薬物動態の変化:腎機能や肝機能の低下、血漿蛋白結合率の変化などにより、薬物の体内での吸収、分布、代謝、排泄が変化し、薬効が強まったり、弱まったりすることがあります。
- 薬力学の変化:受容体の感度変化や、他の疾患との相互作用により、薬物の効果や副作用が変化することがあります。
- 認知機能の低下:薬の飲み忘れや飲み間違いが起こりやすくなります。
問題点
- 薬物有害事象の増加:副作用、薬物相互作用、アレルギー反応などが起こりやすくなり、入院や寝たきり、死亡につながることもあります。
- 生活の質の低下:眠気、ふらつき、便秘など、副作用によって日常生活に支障をきたすことがあります。
- 医療費の増加:薬物有害事象による再入院や、長期的な介護が必要になることで、医療費が大幅に増加する可能性があります。
高齢者への薬物投与における対策
- 薬剤の適正使用:
- 必要な薬剤のみを処方する。
- 薬剤の相互作用に注意する。
- 副作用の発現に注意深く観察する。
- 定期的に薬の飲み合わせや効果を見直す。
- 患者への情報提供:
- 薬の名前、飲み方、注意点などを分かりやすく説明する。
- 薬手帳の活用を促す。
- 家族や介護者への情報提供も重要。
- 薬剤師との連携:
- 薬剤師は、薬の専門家として、患者への服薬指導や、医師への薬物療法に関するアドバイスを行います。
- 高齢者向けの薬剤の開発:
- 高齢者に適した製剤や、副作用が少ない薬剤の開発が進んでいます。
まとめ
高齢者への薬物投与は、
安全性と有効性を両立させることが重要です。
医療従事者、薬剤師、患者、そして家族が協力し、
一人ひとりの高齢者に合った薬物療法を
提供していくことが求められます。
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜