躁病エピソード
躁病エピソード
ここでは三段階の重症度が特定されており、
高揚した気分、および身体的、精神的活動性の量と速度の増加が
共通した特徴である。
このカテゴリーのすべての下位分類は、
単一の躁病エピソードに限って用いるべきである。
気分障害のエピソード(うつ病と躁病あるいは軽躁病)が
連続して起こった場合は、双極性感情障害と診断すべきである。
<軽躁病>
これは躁病の程度の軽いもので、
気分の異常と行動上の異常があまりに持続的で顕著である。
幻覚や妄想を伴わないものである。
持続的な軽度の気分高揚(少なくとも数日間は続く)、気分と活動の亢進、
そして通常著しい健康感と心身両面の好調感が存在する。
社交性の増大、多弁、過度な馴れ馴れしさ、性的活動の亢進、
睡眠欲求の減少をみることが多い。
しかし、そのために仕事がはなはだしく障害されたり、
社会的に拒絶されたりするまでにはいたらない。
いらいら、気まぐれおよび粗野な行動が、
専らふだんみられる上機嫌な社交性の代わりに認められることがある。
注意力と集中力が障害され、そのために仕事をしたり、
くつろいで暇を楽しんだりすることが難しくなるものの、
まったく新しい投機や活動に興味を示さないようになったり、
軽度の浪費がなくなったりすることはない。
<精神病症状を伴わない躁病>
気分は患者の置かれた状況にそぐわないほど高揚し、
愉快で陽気な気分からほとんど制御できない興奮にいたるまで、
さまざまに変わりうる。
気分高揚は活動の増大を伴い、活動性の過多、談話促拍、睡眠欲求の減少を
もたらす。
通常の社会的抑制は失われ、注意を保持できず、
著しい転導性の亢進をみることが多い。
自尊心は肥大し、誇大的あるいは過度に楽観的な考えが気軽に表明される。
色彩が特に鮮やかに(通常は美しく)見えたり、
物の表面やきめの細かさに心を奪われたり、
主観的に聴覚が過敏であったりするような知覚の異常が生じることがある。
患者は実現不可能な途方もない計画に熱中したり、浪費を重ねたり、
攻撃的となったり、好色になったり、あるいはふさわしくない場面で
おどけたりすることもある。
気分が高揚するというより、むしろいらいらしたり疑い深くなる躁病エピソードもある。
発症は15歳から30歳までのことが最も多いが、
小児期後期から、60、70歳代までのどの年齢にも発症する可能性がある。
<精神病症状を伴う躁病>
臨床像は、(精神病症状を伴わない躁病)より重症である。
肥大した自尊心と誇大観念が誇大妄想へ、
易刺激性と疑い深さが被害妄想へと発展することがある。
重症の場合では、自己同一性あるいは役割に関する誇大妄想や
宗教妄想が顕著になったり、
観念奔逸や談話促拍のために患者の言っていることが了解不能になることがある。
ICD-10 精神および行動の障害
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜