ヨガと森田療法の意外な共通点
ヨガと森田療法の意外な共通点—心を整える方法
今回は、ヨガを実践している方々にぜひ知っていただきたい
精神療法をご紹介します。
それは、「森田療法」と呼ばれるものです。
森田療法とは?
森田療法は、100年以上前に日本の精神科医、森田正馬によって
創設された治療法です。
主に神経症に対して効果があり、
日常生活に森田理論を取り入れることで、
認知の歪みを正し、心のバランスを整えます。
ヨガと森田療法の共通点
森田療法とヨガ哲学には、驚くほど多くの共通点があります。
たとえば、森田療法では以下のような教えがあります
・あるがまま(今ある自分をそのまま受け入れる)
・気分本位ではなく目的本位(感情に流されず目的を見失わない)
・症状を無くそうとしない(症状に焦点を当てず、自然に身を任せる)
これらは、ヨガ哲学でも似た考え方が存在します。
・イシュヴァラプラニヤーダ(自然や流れに身を任せる)
・サントーシャ(満足・充足)
・アパリグラハ(執着を手放す)
・タパス(試練を受け入れる)
また、これらは「マインドフルネス」でも同様に重要な教えです。
今ここに意識を向け、
あるがままを受け入れる心のあり方は、ヨガやマインドフルネスの実践にもつながります。
ヨガと森田療法、心を整える共通のアプローチ
多くのヨガを続けている人々は、
心身の不調を改善するためにヨガを始めた場合が多いです。
森田療法も同様に、人生の転換期に直面した時、
心のバランスを取り戻すために有効です。
ストレスや環境の変化が原因で、
神経症のような状態に陥ることがありますが、
森田療法もそのような時に役立つ考え方です。
森田療法に「メソッド」はない?
森田療法には、
特定の手法やメソッドがありません。
その代わり、日常生活に森田理論を自然に取り入れていきます。
しかし、これは理解力が必要で、時に実践が難しいこともあります。
そこで、ヨガの実践が有効に働く場面があるのです。
ヨガの時間は自分と向き合う貴重な時間です。
練習中に感じる感情や気持ちに気づき、
それを森田療法の視点で見つめ直すことで、より深く心を整えることができます。
ヨガによるカタルシス効果
ヨガには「カタルシス効果」があります。
これは、体を緩めることで抑えていた感情が表面化する現象です。
普段、心が落ち着かず、焦りや不安を感じているなら、
その感情が解放されるタイミングかもしれません。
その感情を見つめ、森田的な考え方で向き合っていくことで、
心が軽くなり、次のステップへ進むことができます。
森田療法の「感情の法則」
森田療法には「感情の法則」というものがあり、
誰もが陥りやすい感情や思考について解説しています。
ここでは、特に重要な2つを紹介します。
・感情は放置すれば、自然に消失する(感情は時間と共に収束する)
・感情は注意を集中させると強くなる(感情に意識を向けすぎると増幅する)
不調時に、私たちはその感情に固執してしまいがちですが、
この法則を理解し、感情にとらわれずに過ごすことが大切です。
このコラムでは、ヨガと森田療法がどれほど相性が良いかを伝えました。
心のバランスを整えるために、
ヨガと森田療法の考え方を取り入れることで、日々の生活をより充実させていけるはずです。
文/石井及子(日本ヨガメディカル協会)
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜