漢方薬 大柴胡湯
「耳鳴に対するツムラ大柴胡湯の臨床的効果」
―脂質代謝との関連―池田 勝久 他
(緒言)耳鳴はその発症機序は不明な点が多く、
電音性、感音性、血管性などに原因が代別されている。
特に内耳由来の耳鳴に対して各種薬物療法が試みられている。
今回、われわれは耳鳴の発症に全身の脂質代謝異常に注目し、
脂質代謝改善効果を有する漢方星座「ツムラ大柴胡湯」を
耳鳴(または頭痛)患者に投与し、
その臨床的効果を観察するとともに本薬剤の血清脂質値への影響を測定し
耳鳴との関係について検討した。
(論文参照)
(結果)全対象患者22例中「著効3例(13.6%)、
有効1例(4.5%)、やや有効6例(27.3%)、無効12例(54.6%)であった。
従って、本薬剤によって何らかの効果を認めたのは22例中10例(45.5%)であった。
脂質代謝について
血清コレステロールと中性脂肪の薬剤投与による変化(%)と
治療効果(治療前後の総得点の変化)を比較すると、
どちらも有意な相関は得ることはできななかった。
しかし、治療前後による脂質の上昇又は低下を、
治療効果と比較すると15例中10例で両者の変化に一致が認められた。
(以下、論文参照)
「大柴胡湯およびその加減方が有効な全身倦怠感、易疲労感について」
―木村 容子 他―
(要旨)
(緒言):大柴胡湯が有効な全身倦怠感や易疲労感の患者タイプを多変量解析により検討した。
(結果)大柴胡湯によって全身倦怠感や易疲労感を改善できる患者タイプは
「発汗」「のぼせ」「喉のつまり感」「胸の圧迫感」などの自覚症状を伴う人であった。
特に、発汗の症状があって治療後に胸脇苦満が軽減する場合に、
大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善が最も関連する結果となった。
(考察):「喉のつまり感」や「胸の圧迫感」などの気うつが背景にあると推測された。
発汗は頭を含めた上半身に多い傾向があり、また、
大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善は、
初診時の胸脇苦満の部位(右、左、両方)よりむしろ治療後に
胸脇苦満の軽減を認める人に認められやすいと考えられた。
キーワード:大柴胡湯、全身倦怠感、易疲労感、発汗、喉のつまり感
(緒言)全身倦怠感や易疲労感は虚証で多くみられる症状のひとつである。
しかし、一般的には実証向けとされる処方である大柴胡湯でこれらの愁訴が
改善されることも臨床ではしばしば経験する。
そこで今回、どのような自覚症状や他覚所見を伴う全身倦怠感や
易疲労感に大柴胡湯およびその加減方が有効であるかを検討した。
(以下、論文参照)
(考察)臨床上の使用目的としては、
筋肉の発達のよい肥満型のがっちりした人で、
汗かきで暑がりのことが多い陽実証の人、
強い胸脇苦満、便秘傾向などが挙げられる。
しかし、臨床では実証向けの大柴胡湯を用いて、
気虚スコアにも含まれ、
虚証で多くみられる症状の一つである全身倦怠感や易疲労感が
改善することをしばしば経験する。
(以下、論文参照)
(結語)大柴胡湯によって全身倦怠感や易疲労感を改善できる患者タイプは
「発汗」「のぼせ」「喉のつまり感」「胸の圧迫感」などの自覚症状があり、
また、初診時の胸脇苦満の軽減を認める人である。
発汗は頭を含めた上半身に多くみられ「胸脇苦満の改善あり」と
「発汗」の組合せが大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善と関連があった。
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤 大宜