漢方薬 五苓散
五苓散
椎間板ヘルニアや脊椎間狭窄症に対して、
一般的には(八味地黄丸、疎経活血湯、五積散、
当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰勺薬散)などが用いられる。
今回「五苓散」が有効だった症例を報告する。
症例1
63歳の女性です。
整形外科で変形性脊椎症、腰部脊椎間狭窄症と診断、
治療を受けていたが、症状は進行。
100mほど歩くと足のしびれと痛みのために休まなければならなくなりました。
整形外科では
「あなたの病気はこれから悪くなる一方で手術をしなければ数年で立てなくなる。」
と言われたそうです。
「五苓散」を投与、
「何となくいいようだ」という言葉がありましたので、
投与し続けました。
3ヵ月後には700~800mの距離を休まず歩けるようになりました。
半年後には、何とハイキング程度の山歩きができるようになりました。
症例2
74歳の女性です。
3年前、この方は整形外科で腰部変形性脊椎症と診断され、
治療を受けていました。
足の痛みとしびれを主訴に来院されました。
最初、(疎経活血湯)とか(五積散)を投与しましたが、
無効でした。
診察上、明らかな水毒はなかったのですが、
先程のような症例がありましたので、「五苓散」を投与しました。
投与したところ、3ヵ月後にはしびれは全く消失しました。
残念ながら足の痛みまではあまり変化は出ませんでした。
症例3
52歳の男性です。工事現場で重機を操作している男性です。
5~6年前から腰と右足に痛みが出てきたそうです。
整形外科では腰椎椎間板ヘルニアと診断されたようです。
この時は、動けないほどの痛みがあったのですが、
整形外科での保存的療法で、痛みはかなり軽くなり、
仕事はできるようになったそうです。
ただ、今でも咳をしたり、夜中に寝返りをうつと非常に痛んで目が覚めてしまう、
ということで来られました。
ラッセーグ・テストは陽性でした。
腹診では、はっきりした小腹不仁を認めました。
舌に歯圧痕がありました。最初、腹証より(八味地黄丸)を投与したのですが、
あまり効果がありませんでした。
それでやむなく(疎経活血湯)に代えたのですが、
痛みは「少しいいかな、どうかな」というぐらいであまり芳しくなかったので、
「五苓散」を併用しました。
2ヵ月の服用で、夜間の痛みで目が覚めることは全くなくなり、
咳をしても痛くはなくなったということです。
ただ、無理をしたときなどは痛みがでるということで、
完全に痛みが取れたわけではありません。
変形性脊椎症とか椎間板ヘルニアの治療を行うとき、
漢方薬で脊椎などの変形とかが改善することは期待できません。
代田文彦先生から
「痛みに対して、(麻黄)や(附子)だけを使っていたのでは、
治療の幅が狭くなる。
変形した骨と神経がいつもこすれているので、
神経は腫れてむくんでいる。
鍼で治療する場合には、そのむくみを取るようにする。
神経が細くなると、こすれにくくなる。むくみを取るのも一つの治療方法だ。」
むくみを水毒と考え、「五苓散」を使用してみました。
神経痛の漢方的治療
神経痛の本態については西洋医学的には、
たとえば坐骨神経痛の原因として椎間板ヘルニアなどをあげ、
何らか機質的に神経線維を圧迫するような形態学的変化を追及するが、
実際問題としては、そのような機質的異常の発見出来ない場合が大部分である。
リウマチの場合でも、一応は膠原病という、わくには入っているものの、
膠原病そのものが漠然とした概念的カテゴリーであるから、
原因というわけにはいかない。
すなわち神経痛の原因は現代医学的には説明が十分でない。
「椎間板ヘルニアに対して五苓散の治療」
溝部 宏毅 みそべ内科循環器医院
精神保健福祉士・介護福祉士
伊藤大宜